1914年、北欧スウェーデンで生まれたホグロフス、創業のきっかけは手縫いのバックパックだった。111年間続くバックパックづくりの集大成とも言えるモデルが、このBackシリーズである。サイズは28、38、48ℓの3種類で、ここではアウトドアでの使用頻度が高い38ℓモデルを紹介しよう。ミニマムなテント泊縦走や小屋泊山行、海外のバックパッキング旅など、多用途で使いやすい中型モデルである。
昨今の山岳用バックパックのトレンドは、軽くて、通気性が良いこと。ホグロフスはそういう流行りには流されない質実剛健で、普遍的で、実直なパックづくりを貫いている。地球環境に配慮したリサイクル素材と耐久性の高い新素材を織り交ぜつつ、より使いやすく、快適に装備を持ち運べるデザインを追求しているのだ。
Back最大の特徴は、このようにセンターファスナーが大きく開くこと。荷物の収納がしやすく、取り出しやすい利点がある。テントや客室へ持ち込んで、このように広げれば装備の整理整頓がストレスなくできる。
ダブルタグのファスナーだから、上からも下からも開けられる。パッキングの精度を崩すことなく、ボトムにある装備を一時的に取り出せるのはありがたい。
雨蓋に覆われるエントランスはこんな感じ。センターファスナーは丈夫なウェビングに守られている。ファスナーがエントランス上部末端まできているので、細引きとファスナー、どちらからでも内部へアクセスできる。ボタン&ファスナーの方がスムーズにメインコンパートメントへアクセスできた。
メインコンパートメント中央にある黄色いストラップは、少ない装備でも遊ぶことなく、安定して持ち運べる機能だ。センターファスナーの構造だからなせる技である。
2つのサイドポケットは、トレッキングポールとテントポールをまとめて収納できる大容量。メッシュの伸縮素材を用いたブランドが多いなか、ホグロフスは耐久性を重視してコードによるコンプレッション方式を採用。ボトルやサンダル、座布団などさまざまなアイテムを安心して持ち運べる。
ベルクロで固定されているショルダーハーネスをこのように剥がして、背面の長さを無段階で調整可能。体型や骨格が異なる老若男女がフィット感を得られるユニセックスモデルだ。
ショルダーハーネスと本体の間に容器を挿入して、ハイドレーションシステムをセットできる。メインコンパートメントへ容器を入れなくていいので、水の補給がしやすく、パッキングの邪魔にならない。
ハイドレーションの容器を入れる空間のボトムには水抜け穴を配置。万が一水が漏れても、雨が入り込んでも、ここから水を排出する。「Haglöfs」と文字が入ったかわいらしいハトメはデザインのアクセントに。背面パネルと各種ハーネスには、通気性が高く、適度なクッション性を持つメッシュ生地を採用している。
フロントには2本のコンプレッションベルトが備わり、このように折りたたみ式のスリーピングマットを固定することも可能だ。この2本のベルトは、縦に配置されたデイジーチェーンに結び付けられているだけなので、上下に動かして、好きなポジションにセットできる。
ロゴは、剥がれる心配があるプリントではなく、半永久的な刺繍を採用。
デザインとカラーはブラックに統一し、こちらも流行すたりがない半永久的なルックス。
生地には、100%リサイクルされたポリアミドを用いている。摩耗と引き裂きに耐性が高く、雨を弾く。廃棄された素材を再び蘇らせ、10年、20年と長く使えるものづくりが、持続可能な社会を作り、美しい地球環境を維持していく。そんなホグロフスのフィロソフィーを投影したパックである
Text/Shinya Moriyama
Photo/Chitose Omori