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塚原美幸が北海道で描く、スキーヤーとして、母としての暮らし。

塚原美幸が北海道で描く、スキーヤーとして、母としての暮らし。

 6歳でアルペンスキーをはじめ、大学まで学生時代は競技一色。卒業後は基礎スキーに転向し、全国各地で開催される大会を転戦してきた。 

常に大会への出場を最優先させるため、オフシーズンはスキー場のパトロールやインストラクター、夏は白馬の登山者向け山小屋で働くライフスタイルを送る。 

  

「当時は独身だったこともあって、そのときに行きたいところへ行く生活。スキーの大会に出られる準備ができればどこでもよかったんです。 

中学と高校の合宿で行ったニュージーランドの自然が好きで、日本が夏の間は現地でインストラクターをやっていたこともあります」 

 

 そんな大会中心の生活に転機が訪れる。パトロールの仕事の先輩に勧められたバックカントリースキーにのめり込み、競技をあっさり引退。 

そして山岳ガイドである塚原聡と出会い、結婚。出産を機に子育てに専念する生活へ。 

 

「もともと夫は札幌でガイド会社に勤めていたのですが、15年ほど前に独立し、キロロ(北海道・赤井川村)にベースを設けました。 

キロロは地理的に常に雪雲が発生するロケーションのため北海道の中でも群を抜いて雪質が良好。札幌にもアクセスがよく、山も海もある恵まれた場所なんです。 

 スキーをはじめとしたウインタースポーツはもちろん、冬は子どもたちと一緒に家の前でソリをすることもかまくら作りもできます。 

雪が解けたらカヌーに乗って山菜採り。夏は登山にSUP、シーカヤックも。季節ごとにベストなところに行く感じです 」。 

 

家のまわりには手付かずの森が広がる。近くに病院がなく、移動も公共交通機関に頼れないなど、不便なことをあげればいくつもある。 

北海道の降雪は本州であれば災害級。自然の猛威は軽々とライフラインを絶ってしまう。昨年はCovid-19の影響により流通が途切れることを想定して、野菜の種を買って植えた。 

ちょっとしたことで陸の孤島になる可能性を考え、食料や燃料のストックを用意するなどいつでもサバイバルできる準備もしている。 

 

 「でも、自然を求めるお客さんにとっては最高のロケーション。クマやフクロウといった野生動物もたくさんいますし、物置を開けたらタヌキが冬眠していたということも。 

私の地元(故郷)は魅力のない田舎だとずっと思っていたのですが、都会に住んでいる人にとってはお金を出してでも体験したい環境なんだということに気付きました」。 

 

 今年は、お子さんを保育所に預けられるようになり、念願の雪上復帰を果たした。 

「不思議なことに、今はバックカントリーよりもグルーミングがかかったゲレンデをアルペンスキーの細い板で滑るのが楽しいんです。 競技をやっていたときは、やっぱり勝ち負けもあるし、決められた場所だけを滑るのが嫌だと感じるときもありました。もう二度とやるかって思っていたんです。 でも、やっぱりスピードを出して滑るのが好きなんだなと、自分でびっくりしています。そんな心境の変化も面白いですね。子どもたちも成長していくので、一緒にのびのびスキーをつづけられたらと思っています」。 

 

*プロフィール 

塚原美幸(つかはら・みゆき) 

1985年、北海道の共和町生まれ。幼少期からスキーアルペン競技をはじめ、北海道代表としてインターハイ、国体出場。大学卒業と同時に競技を引退、基礎スキーに転向し、全日本スキー技術選手権最高21位。現在は夫が営む「北海道バックカントリーガイズ」で、一年を通してスタッフとして働く。3児の母として北海道の片田舎でリアルアウトドア生活を送る。

 

Photo/ Ayako Niki

Text / Kosuke Kobayashi 

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