アウトドアや登山、スキー/スノーボード関連の雑誌・Webメディアで編集を仕事にしている福瀧(ふくたき)です。
登山雑誌『PEAKS』160号で、今年の夏山に向けた企画として山好き女性のための最新登山ウエア・ギアカタログを担当しました。レインウエアをはじめ、ミッドレイヤーやベースレイヤー、トレッキングパンツ、バックパックからサングラスなどの小物に至るまで、全14ページの構成になっています。
この仕事をしていて本当に役得だなと思うのは、誌面で紹介するために自分が気になる製品をリサーチして、撮影のために取り寄せ、撮影スタジオで現物を実際に手にして心ゆくまで眺められるということ。
外出を控えていたコロナ禍からはもっぱら自宅にカメラマンさんをお呼びし、リビングを仮設スタジオにするスタイルになりましたが、その期間中は集めに集めた最新ウエアやギアが自宅にあるわけで、夜な夜な試着してみては「次はどれを買おうか」と物欲妄想ナイトをひとり繰り広げていたわけです。これがたまらん時間で!
で、前述した『PEAKS160号』の女性カタログの一部がこちらなんですが、今回はモノの紹介だけでなくモデルさんを起用したフィールド撮影も実施しました。
ミッドレイヤーの見開きでは、“シンプルで使いやすそう”とモデルさんの着用にスタイリストさんと採用を決めたのが、右ページにあるホグロフスの薄手フリースジャケットの「ベツラジャケット」。
で、その後まんまと物欲に負けて(?)色違いを購入するにいたったというのが、今回の話なわけであります。はい、こちらそのオリーブ。
しかも入手の直後に控えていたのが他誌のシーカヤックの取材で、実際に使えるチャンスがいきなり到来。陸はすでに初夏の陽気でしたが、海沿いの夜はまだ冷えるということで「これは試さずにおれようか!」と、いそいそとフィールドへ持ち出しました。
せっかくなので、その使用感にも触れてみたいと思います(前置き長い)。
まだそのシーカヤック記事は世に出ていないため場所や内容は明記できないのですが、訪れたのは5月半ばの東海エリア。入り組んだ海岸線に点在する無人浜をつないでシーカヤックツーリングを行なうというキャンプでの2泊3日の取材でした。
シーカヤックツーリングの何が楽しいって、パドルで水面をたぐりよせ、海上を歩くように自由に旅することが魅力と多くの人が言うのだと思います。ですが私はそれと同様か、いや、それ以上にキャンプ地に上陸したのちの、メンバーで焚き火を囲む時間が至福のひと時なんですよね。
べツラジャケット、着ております(写真:亀田正人)
これを最高と言わずしてなんと言うのか。
この至福のひと時に快適なウエア環境を作れるか……というのが(浜でおいしいお酒をのびのびと飲む上で)非常に重要なのであります。寒いと冷えたビール、全然進みませんしね。
この日の夕暮れ以降の気温は、だいたい体感にして15℃前後。北アルプス・上高地でいう8月の最低気温がそれくらいなので、山好きの人にもイメージしていただけるでしょうか。
「ベツラジャケット」は長袖Tシャツの上に羽織ってまさにこの夜の温度域とフィールドにドンピシャのミッドレイヤーでした。
具体的にはまず、厚みが適度に薄く、ほどよく暖かかったこと。
裏地は毛足の短いフリース、表面はツルっとスムースな生地。適度な保温性と早朝などにシェルを重ねてももたつくことがなく、厚みとともにとてもよいバランスでした。
パワードライとしては、吸湿性の高さも触れておきたいポイント。毛細管現象(繊維と繊維の隙間のような細い空間に、重力や上下に関係なく液体が吸い上げられる現象)の作用によって、ウエア内にこもった汗などの湿気は急速に吸い上げられ、水分が生地の表面へと伝わってすばやく拡散していく機能があります。
今回は涼しい場所での着用だったため汗抜けのよさをしっかりと体感することはあまりなかったですが、登山のような運動が続くシチュエーションでは体温調整も快適だろうな、と想像しました。
また、部分的によかったのはアゴ下まで届く高さのある立て襟と、手の甲までしっかり覆うサムホール。
今回も夜に使いましたが、これがさらに役立つだろうなと感じたのが、夏の高所登山で未明に出発するようなときや、スキー/スノーボードでバックカントリーへ出るとき。首元や手先から侵入する冷気をがっちり防いで、保温性を高めてくれそうです。
まぁホグロフスって北欧ブランドですから、本国の人たちにはこんなに立て襟がアゴ下マックスまで来ないかもしれないですけどね(涙)。私のような短い首のアジア人であることが功を奏して(?)保温性をより高めているのかもしれません(涙笑)。
さて、まとめます。
この「べツラジャケット」は、ものすごく暖かいわけではないけれど、逆に強力な保温性を求める場面以外の、幅広いシチュエーションで使えるミッドレイヤーと言えます。今回のような海辺や、春〜秋の山の上、運動量の多いウィンタースポーツなどの寒いシチュエーションだけに留まらず、野外フェスティバルや国内旅行、海外バックパッキングなど気温がイマイチ図りづらいときも、「寒い可能性もあるからとりあえず保温着一着持っていくか」の第一候補になります。それはひとえにこの「適度に暖かい」という絶妙な保温性にあるのではないでしょうか。
行動中に着用する保温着はアクティブインシュレーションがいま人気ですが、ベツラジャケットのようにベーシックなフリースは、原点回帰ではないですが一周まわってやはり使いやすいなと思います。いい感じで薄く、ほどよく暖かく、吸湿発散性に優れ、軽くてシンプルなデザイン。そりゃあアッチへもコッチへも持っていきたくなるわ!
「ベツラジャケット」はリサイクルポリエステルをベースに、その他もブルーサイン認証素材を使用。自然のなかで遊ぶ我らのマインドにとっても気持ちのいいアイテムなのだ。
なお、シーカヤック取材の模様は6月末に全国のアウトドアショップ等で配布予定のフリーマガジン『フィールドライフ』に掲載予定です。Amazonからも無料ダウンロードできますので、興味のある人はご覧になってみてください。