ホグロフス24/25コレクションが届いた。
今季はインサレーションウェアが豊作だ。
なかでも注目は、「スピッツダウンフード」。
定番のアウターシェル「スピッツGTXプロジャケット」や、化繊インサレーション「スピッツミミックフード」に続く、スピッツシリーズの最新作である。
■Spitz Down Hood Men 全3色 ¥49,500
■Spitz Down Hood Women 全3色 ¥49,500
「スピッツ(spitz)」は、ドイツ語で「鋭い/尖った」という意味の言葉。アルプスの頂のような鋭い峰に着想を得たその名前は、厳しい山岳環境を対象にしたモデルに与えられる。このダウンフーディも、山のアクティビティにフォーカスしてデザインされた。
山で使うダウンウエアとして強化したポイントはふたつ。
ひとつは運動性だ。ダウンを封入する2wayストレッチの生地は、2枚の生地を縫い合わせるのはなく、ダウンの偏りを防ぐバッフルを表と裏の生地を織り合わせてつくっている。
「プレウーブンバッフル」と呼ぶこの構造は、縫製糸によって伸縮を止めることがないため、もともとの生地がもつしなやかさや伸縮性を最大限に生かすことができる。針穴をつくらないため、コールドスポットが最小限に抑えられるのも利点だ。
ふたつ目のポイントは濡れに強いこと。封入する「Hダウンプラチナム」は、800FPのグースダウンに撥水加工を施したもので、水分を寄せ付けずにロフトの喪失を防ぐ。
軽い雨や雪などの湿潤環境を想定したテストでは、最長約10,000分間(およそ1週間!)ドライな状態を維持した。DWR(耐久撥水)加工を施した表地との相乗効果により、雪山のテント泊や雪洞泊のようなハードな場面でも安心して使えそうだ。
革新的なこれらのデザインと持続可能性が評価されて、スピッツダウンフードは、ISPOアウトドア部門の「アパレル - インシュレーテッドジャケット」カテゴリーで賞を受けた。
使用するダウンは動物福祉に則って採取されたものだ。RDS認証を受けており、流通経路をたどることもできる。シェルにはリサイクルナイロンを使い、DWRはもちろんフッ素不使用のPFCフリー。環境負荷軽減のために、できることはすべて押さえている。
今回は山に持ち込むことはできずに試着したかぎりだが、印象はとても良い。
縫い目を最小限にしたウエアは柔らかさも均一で、着心地はとてもソフト。驚くほど伸びる生地ではないが、硬さを感じる部分がなく、ストレスなく動ける。動きやすさによるものか、手にしたときよりも着たときの方が軽く感じられる。
細部のつくりも申し分ない。フードはヘルメットの着用に対応。フィット感を高めるライナーを内蔵し、後頭部のドローコードひとつで調節できる。
フロントはWスライダーでクライミングハーネスも装着時もノーストレス。ファスナーのフラップには、化繊綿のミミックシルバーを入れている。
雪や氷が溶けて流れ込むことを想定した仕様だ。袖口にはインナーカフを備えて手元からの冷気の侵入を防いでいる。
冬の登山やクライミング、バックカントリースキー/スノーボードに、“動ける”ダウンを探しているなら、スピッツダウンフードは最新の有力候補である。
文:伊藤 俊明